阿久根信之 著 「翻訳者日記」
1-4-2 翻訳者の勉強法 (1)
鹿児島は数日前に梅雨明けし、真夏の日射しが照りつけています。今回は、「翻訳者の勉強法」と題して書くことにします。

「翻訳者の人って、どんなふうに勉強しているんだろう?」と思っていらっしゃる方も多いことでしょう。私自身の学習法が他人に参考になるのか多少の不安はありますが、普段の生活で気をつけていることをちょっと紹介します。

以前に「翻訳者の一日」で書いたように、私は一日のほとんどを自宅で過ごします。おまけに、朝から夜まで翻訳していることが多いので、いわゆる「勉強」という時間はあまり確保できないのが現状です。しかし、翻訳内容に関しては、相当な時間を費やして調べます。半導体製造装置関連の和訳が入ったら、「初めての半導体製造装置」といった本を拾い読みしながら原文を読みますし、英訳の仕事が入ったら、必然的に英英辞典や Thesaurus (類義語辞典)を使って、自分の英文が適切か調べます。
考えてみれば、こうした時間が翻訳者の勉強に相当するのかもしれません。翻訳者として仕事を受注するためには、ある程度の専門知識が必要になることはご存じですよね。その点では、英語自体の学習よりも、翻訳したい分野に関する知識を増やすことが、翻訳の精度を上げる1つの方法だと言えます。

仕事中に「勉強」だと思って気を遣っていることがもう1つあります。原文で使われている英語表現への注目です。和訳を依頼されるときには、当然、英語の原稿をいただきます。たしかに、訳してしまえば、仕事は完了したことにはなりますが、一日に2500から3000ワード程度の英文を読むのですから、ただ読み流すのでは、なんとももったいない話です。翻訳原稿には、とんでもない英語が使われていることもありますが、思わずうなってしまうような英文をみつけることもあります。
「こんな英文を書いたらわかりやすいな」と感心したときは、凄い発見をしたような気分になり、妙に嬉しくなるものです。仕事をしながら、新しいことを学べるのですから、贅沢な話です。

次回も、勉強法の続編です。お楽しみに。

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