技術翻訳の秘訣(増補版)
「あなたの車はミッションですか、それともオートマですか?」
「私の車はマニュアルです。トルコンはきらいです。」
これは自動車のトランスミッション(変速機)についての会話ですが、用語の使い方が正しくありません。正しく理解しておきましょう。
トランスミッション (transmission) はエンジンで発生した回転を減速してタイヤに伝えるためのもので、多くのギアの組み合わせで減速比を変えます。自動車が発明された当初は減速比の切り替え(ギアのシフト)は運転手が手動で行うタイプしかなく、トランスミッションとはすべてマニュアルトランスミッションでした。日本ではミッションと省略されてきました。
そのうち技術の進歩につれて、変速を自動で行うオートマチック・トランスミッション (automatic transmission) が発明されました。日本ではこれをオートマと省略した呼び方をします。またオートマチック・トランスミッションの内部で回転力を伝達する重要な部品にトルクコンバーター(torque converter:略してトルコン)というものが使われているので、オートマチック・トランスミッションはトルコンとも呼ばれます。
automatic transmission も manual transmission も内部に多くのギアが使われているので、英語ではgear boxとも呼ばれます。
以上のように日本語では色々な呼び方をしていますが、英語に翻訳するときには必ず正式な英文名称(transmission、manual transmission、automatic transmission)を使ってください。
自動車用語の中でミッションと紛らわしい言葉でエミッション (emission) というものがありますが、これは排気ガスのことです。またミッションをmission(派遣団、使命)としないように気をつけてください。
技術翻訳のトランスワードが発行している書籍「テクニカルライティングと技術翻訳の秘訣(増補版)」の一部を掲載しています。
技術翻訳を学ぶ人のための参考書販売サイト「翻訳参考書マーケット」で販売中です。