【翻訳技術編】
「金魚鉢の話」というたとえがあります。文章を水に、伝えたい内容を金魚鉢の金魚や岩、水草にたとえています。
水がにごっていると、金魚や岩や水草は見えづらくなるでしょう?文章も同様に難しい単語が多く、わかりづらいと、つまりにごった水であると、伝えたい内容が読み手に伝わらなくなるです。なくても困らない文章は消したらいいのです。
いかにしてクリアで短い文章を書くかという練習が必要です。
基本的な考え方は、あってもいいけれどなくてもすむようなことは書かないということです。長すぎる文章というのは水がにごる原因になります。
それらを一切排除すると、本当に伝えたいことがさっと頭の中に浮かんできます。
英検一級とか大学入試では、これは絶対解けないだろう、どうだこれでもか、という問題がでます。それが解けたら「えらい! えらい! 私は英語が得意なんだ」と思い込んでしまいます。
複雑な構文を使って難しい単語をいかにたくさん知っているかを競い、簡単なこともわざと難しい単語で言ったり、誰も知らないような特殊な世界の言葉を使って、「カッコイイ!どこで覚えたの?」と言われたりしてますます得意になるわけです。
ずっとそんな勉強をしてきたものですから、それを英語ができることだと思い込み、間違った英語の認識にとらわれている人が非常に多いのです。
そんな人達が翻訳すればどうなるでしょう。簡単な言葉で済むところを、わざわざ長い文章にしたり、やたら難しい単語を使用してしまいがちです。複雑な構文を使用すれば翻訳者としてのレベルが高いと思われると誤解しているのです。
翻訳の世界に入る前で、テクニカルライティングの考え方を聞いたことのない人は、難しいことをするから翻訳だという認識が先立ち、肝心の伝えたい内容がどこかに行ってしまっている場合が多いのです。
翻訳というのは言葉が通じればいいということだけを頭に置いてやっていたのでは、いつまでたっても良い文章は書けません。大事なのは基本的な考え方です。
そのための努力をしないと、いくらたってもテクニカルライティング技術にのっとった良い文章を作ることはできません。何をやるにも基本が大切なのです。
技術翻訳のトランスワードが発行している書籍「技術を学ぶ翻訳者養成講座【翻訳技術編】」の一部を掲載しています。
技術翻訳を学ぶ人のための参考書販売サイト「翻訳参考書マーケット」で販売中です。