技術を学ぶ翻訳者養成講座
【翻訳技術編】
3.5.2 同じものには同じ名称を使う
部品の名称を1つのドキュメントの中で変えて書く人がいますが、これはたいへん困ります。

たとえば、「テープレコーダーをスタートさせてください」や「録音機は壊さないでください」や「器材の取扱いには気をつけましょう」というように、同じ物に対して「テープレコーダー」、「録音機」、「器材」など、ばらばらの表現をすると混乱のもとです。

この場合、文章を書く人の頭の中は混乱しているわけではありませんが、そのつど言い換えるのが高尚な文章だと勘違いしているケースがあります。

3.5.2 同じものには同じ名称を使う日本の教育も同じ言葉を使わないように指導してきました。「『メアリーは山へ行きました』というのを繰り返すときは、違う言い方をして『少女は山へ行きました』とか『彼女は山へ行きました』などのように書きましょう」と言われてきました。
しかし、同じ内容は同じ表現にするべきです。

一般の会話では同じ名称を使っているかなどということは気にしませんし、文筆家は文章がうまいからそんな混乱を招くような書き方はしません。
しかしEngineers are terrible writers. なので、書いている本人自身もわからなくなってしまうことがあります。

あるメーカーの自動車工場のマニュアルを翻訳しているときに、自動的に締め付けてどれぐらいの強さでトルクがかかるかを計る機械がでてきました。
そのとき、5つくらい機械名が出てくるので、質問表で「これは何ですか?」と聞いてみたところ、そのメーカーの人は「たまたま現場で使っている名称と実際に普段呼んでいる名前が違っただけでしょう。同じ物ですよ」とあやまりもしないで答えてくれました。

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