【翻訳技術編】
(1) 「以上・以下・未満」には注意する。
「〜を越えて」「〜以上」「〜未満」「〜以下」などの数量表現は、文章を書く人にとってはそれほど重要でない部分と思われています。翻訳者はどちらかといえば構文などに気を使いがちです。
こういう数量表現部分は、簡単にささっとできるところなのであまり注意を払いません。でも、猿も木から落ちます。人間が高い木に登って降りてくるとき、もう少しというところで落ちてケガをするのと同じです。
たとえば、「2人以上」といった場合、一番よくやってしまうのは、 more than two にしてしまうことです。これは言語道断です。日本語で「2人以上」というのは、「2人はOK、3人もOK、それ以上もOK」という意味です。
英語で more than 2 persons と言えば、「2人はダメ、3人はOK、それ以上もOK」という意味なのです。
「2人以上」と「more than 2 persons」は全く違います。これはわかっていながらよくやるのです。日本語で「2人以下」なら「2人はOK」です。
less than 2 persons になると、2人は含まれません。これはベテランになってもやってしまうことですから注意してください。
例外もあります。「2時間以上」といった場合、more than 2 hours でも許されることがあります。連続した数として表現する場合は、こういうことも許されるのです。これでも支障のない場合はOKです。
でも、通常は 2 hours or more とか 2 hours or longer といったふうに表現します。
「2人以上」だったら、two persons or more や over も使えますね。
(2) 対象の数量をよく考える。
正数での話を進めましょう。英語だと less than 10、more than 10、not less than 10、no less than 10 など数量表現がいろいろありますね。
less than 10 といった場合、10は含まれません。9から下という意味です。
more than 10 というのは、日本語にすると、「10を超える」という意味なので10は含まれません。
not less than 10 は、「10よりも下ではない」という意味なので10は入ります。
not more than 10 は10以下ということなので10も含まれます。
no less than 10 や no more than 10 は、10を表すときに使われます。
この数量表現というのは、対象になるものをよく考えないといけません。これを間違われるとチェックするほうは一番がっくりきます。
考えたらわかるのに、なんでやってくれないのだろうと思います。考える努力をしていないのですね。これでは、チェックが大変です。
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