【翻訳技術編】
なぜかというと技術文書というのは主語がない場合が多いからです。「誰が何をした」とか、「この機械がこの機械を動かした」などという表現はあまり多くありません。「コントローラがロボットを動かす」くらいは言いますが、複雑な文章内で無理矢理主語を使って能動態にしようとすると、わけがわからなくなってしまいます。
複雑な文章のときには受動態を使用してください。そうすると、事実関係がはっきりしてきます。
下記の文章について考えてみましょう。
A problem caused by a setting error in the programmable controller was discovered.
この文章は受動態になっています。これを能動態にしようと思えば、主語を何にするか考えなくてはなりません。
We have discovered でしょうか。なんだか変な感じになってしまいますね。
setting error を主語として Setting error caused a problem. としても、なんだかおかしな感じがします。文法的に問題はないのですが、なんだか読んでもしっくりきません。
このように主語がはっきりしない場合は、迷わず受動態にしてください。
よほど修業して上手くならない限り、能動態を使用してスマートな文章を書けるようにはなりません。受動態は便利です。変な主語を選んでしまうかもしれないというリスクがなくなります。
受動態のほうが、日本人にとっては確かに楽で安全なのです。
技術翻訳のトランスワードが発行している書籍「技術を学ぶ翻訳者養成講座【翻訳技術編】」の一部を掲載しています。
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