【翻訳技術編】
たとえば、「採用する」という日本語に対応する意味を持つ英語はいろいろあります。
adopt とか、employ。類語には「利用する」utilize、それから「使用する」use もあります。このように似たような単語がたくさんあります。
意味合いを微妙に表現したいようなときには、これらの単語の中から適切なものを選択し、使い分ける必要があります。しかしそうでないときに、「採用する」「利用する」「使用する」を使い分ける必要はありません。どれでもよいような文脈のときには、あまり単語にこだわらないほうがよいのです。
日本語の原文で「採用する」「利用する」「使用する」というように違う表現になっていても実は同じ動作・内容のことを言っていることの方が多いのです。これをいちいち adopt、utilize、use と訳すと、読むほうはかえって混乱してしまうのです。
この場合、一番シンプルでわかりやすいのは use です。あまり厳密に言葉を使い分けなくてよい場合、日本語でどうなっていようと use で押し通せばよいのです。
原文に振り回されないことが大事です。日本語のもともとの意味に対応させて英語を考えないといけません。翻訳文を見て「おかしいな、変だな」と思うときは、たいてい原稿に振り回されています。
「原文をそのまま英語にしたら、こうなりました」ではプロの翻訳者とは言えません。
原稿というのはおかしいものなのだと思っているほうがよいかもしれません。原稿をそのまま英語にしたのでは多くの場合良い英文は書けません。技術翻訳の世界では、動詞は使い分ける必要がない場合がほとんどです。
技術翻訳のトランスワードが発行している書籍「技術を学ぶ翻訳者養成講座【翻訳技術編】」の一部を掲載しています。
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