荒井邦彦 著 「翻訳しようⅡ」
4.14 主語と述語が相応しない文 (和⇒英)
企業で安直に書いた文書の解釈をします。「改善チームCは、改善チーム活動の中で、唯一海外拠点の私がリーダーとして指名されています」(a) 。
この文構造を分析すると、主語が「改善チームCは」、述語が「指名されています」です。この構文を踏襲して英語を書こうとすると、とんでもないことになります。
この文構造を分析すると、主語が「改善チームCは」、述語が「指名されています」です。この構文を踏襲して英語を書こうとすると、とんでもないことになります。
そうでなくて、(a) で言いたいことを汲み取ってください。書いてあることは「この会社で改善チーム活動が行われている、改善チームがいくつかある(少なくともA、B、Cの3つ以上)、それぞれにリーダーが指名されている、チームCのリーダーは私、私は海外拠点勤務、そのような例はチームCだけ」ということです。これを英語にします。
たとえば、Looking at the kaizen activities of our company, the leader of Team C is myself, the only leader who works overseas.
あるいは、I am the Team C leader, the only kaizen team leader who works overseas. とするとさらに短くなります(前後に「改善活動」の記述があるなら、これでよい)。日英の文構造を合致させることに気を使わないでください。
翻訳セミナーで、「(a)のような日本語を扱うのがイヤな方は、企業関連の文書の翻訳ではなく、別の分野(法律、あるいは文学とか)に挑戦するとよい」というお話をしました。私自身は、上のような企業文書の真意を汲み取ることも面白いと思っています。
まとめ − 和文構文をそのまま英語に転写しない。言いたいことがら全体を汲み取って翻訳する。
技術翻訳のトランスワードが発行している書籍「荒井邦彦 著 「翻訳しようU」」の一部を掲載しています。
技術翻訳を学ぶ人のための参考書販売サイト「翻訳参考書マーケット」で販売中です。