技術翻訳基礎コース (翻訳課題解説集)
[原文]This self-location scheme functions in the idle stage and is completely user-independent.
(訳例a)この自動検出方式は待機状態で機能し、完全にユーザから独立している。

主題である the self-location scheme ですが、「自己位置特定方式」「自己位置確認システム」「セルフロケーション方式」などさまざまなバリエーションが考えられます。
「自動」というより「自己」ですね。「自分の」「自分で」のニュアンスが強いと思います。携帯電話では「自己位置確 認」がよく使われています。
ここの functions は複数ではなく、動詞です。
idle stage とは「待ち受け状態」のことです。すなわち、電源は入っているが通信はしていない状態ですね。「待機状態」「使用していない状態」でもいいですが、自動車電話ということを考えると「待ち受け」が一番しっくりくるでしょう。
completely user-independent は「完全にユーザから独立している」という意味ですが、噛み砕くと「ユーザが知らないうちに機能している」「ユーザの操作がなくても作動する」ということです。

(訳例b)自動位置選定機能はアイドリング状態で機能し、ユーザによる選定とは完全に独立して行われる。

「アイドリング状態」は自動車ではないので適切ではありません。もともと idle には遊休設備の意味もありますが、それから転じて「電源は入っているが、実際には作動していない」状態を指します。

(訳例c)このセルフロケーション方式は自動車電話を使用していない状態で機能し、各ユーザにまったく依存しない。

「自動車電話を使用していない状態」「各ユーザにまったく依存しない」をもう少し実用的でわかりやすい表現にするといいですね。

(訳例d)この自己位置特定の機能は、移動機が待機している間に動作し、ユーザの操作を全く必要としない。

「ユーザの操作を全く必要としない」というのは的確な表現です。

(推奨訳例)
このセルフロケーションシステムは、端末機の待ち受け状態で機能し、ユーザとは関係なく自動的に動作する。
よく推敲された訳文です。
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