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技術翻訳Q&A

技術翻訳に関して皆様から寄せられた質問に、仲谷と弊社スタッフがお答えしました。

目次

【Q1】「要求仕様書」と「要求定義書」の英訳時の単数/複数形がわかりません。
ソフトウエア開発におけるドキュメント「要求仕様書」「要求定義書」等の英訳の単数/複数形がよくわかりません。
いろいろと検索してみたところ、どちらも同程度使用されており、現状では
"requirements specification" "requirements definition document"と訳しています。
また、仕様書はspecification,仕様はspecificationsを訳し分けています。
正しい訳を教えてください。

Answer
要求仕様書はrequirement specifications、要求定義書はrequirement definition documentで良いと思います。実際には同じ物をさしていることが多いのでどちらもrequirement specificationsと訳して問題ないでしょう。
ここでrequirementにsが付かないのはrequirementという名詞が形容詞的に使われているからです。specificationsと複数形になるのは通常この種のドキュメントには多くの項目(複数)のspecificationが定められているためです。
【Q2】"upstream broadcast" の和訳は?
upstream broadcast に対応する用語は何でしょうか。
デジタル映像、音声放送の双方向サービス、に関するものですが、「上流放送」「上り放送」「上流ブロードキャスト」などと訳してもよいものでしょうか。
検索しても、これらの日本語はほぼヒットしません。

Answer
英語を日本語にする時、適切な日本語が見つからない場合(つまり一般的に通用する日本語がまだ存在しない場合)は英語の読みをそのままカタカナ表記にします。
この場合は「上流ブロードキャスト」または「アップストリーム・ブロードキャスト」にするのが安全だと思います。
ちなみにこのbroadcast、自動車などの製造現場では以下の意味で使われることが多々あります。
broadcast; A tag showing assembly codes, etc.
(用例)
・Put up the Broadcast on the hood.
・Check the broadcast codes to avoid assembly errors.
・早見表 Broadcast Codes Summary
・袋にブロードキャスト設定 Attach a Broadcast tag in plastic bag.
【Q3】電流に関する文章の「前段」「後段」の英訳は?
液晶ディスプレイの駆動回路に関係した英訳をしています。「前段」「後段」という言葉がよく出てくるのですが(例:画素トランジスタを前段の走査線に接続する。) 、これらは英語では通常何と表現されているのでしょうか?
回路を説明する文章ではよく使われる言葉だと思いますが、どう表現すればいいのかよくわかりません。"upstream","downstream"と訳されているのを見かけましたが(The pixel transistor is connected to the upstream scanning line.)でいいのでしょうか?

Answer
upstream、downstreamとは水の流れの上流、下流のことです。電気の流れはよく水の流れに例えて説明されます。
電気(電流)はプラス極からマイナス極に流れるという前提で、プラス極により近い場所を(電気の流れの)上流、マイナス極側を下流と言うことができます。
"Transistor is connected to the upstream line."は「トランジスタはプラス極側に位置する回路に接続されている」つまり、「電気はその回路からトランジスタに流れている」ということがよくわかります。前段、後段に対する定訳はありませんが、ご指摘の例は内容を適切に表現している例だと思います。
【Q4】技術文書における「~なので」の適切な英語表現を教えてください。
技術マニュアル翻訳で「~なので(のため)、(ゆえに)・・・」という表現をしたい場合、"Since (As) ~, ・・・"や"~, so ・・・"などが考えられますが(例:Since this function is disabled, choose another one.  This function is disabled, so choose another one.)、技術文書上ではどれが適切なのでしょうか?

Answer
テクニカルライティングでは多義的な用語(複数の意味を持つ単語)や口語的な用語は好まれません。
sinceは「~なので」という意味がありますが、同時に「~以来(時間)」という意味を持つ場合がある多義的な用語の1つだといえます。asも同様に多義的な語です。
これらに対しbecauseやthereforeは1つの解釈しか出来ない用語なのでテクニカルライティングではよく使われます。
soは少し口語的な感じがしますので、これも避けたほうが良いでしょう。
【Q5】「開発成果物」の英訳は?
ソフトウェアの開発計画書の英訳をしています。その中で使われている「開発成果物」の英訳に悩んでいます。result, achievement, accomplishment等を考えていますが、いかがでしょうか。
Answer
Of the options you presented, "result" is most likely to be correct.
It is also the only neutral term, as the others connote "success" or "reaching a goal."
"Results of development" should be fine. One other option, if you know exactly what the 開発 and 成果 are, is to state the results explicitly, such as "completed software design."
【Q6】システム画面上の「付帯情報」ボタンの適切な英訳を教えてください。
「社内標準」のデータベースの中で「付帯情報」ボタン(クリックすると社内標準の名称、管理番号、 施行日等の内容が入ったウィンドウが表示されます)の訳語の候補として"Accessory Information"、 "Additional Information"、"Supplementary Information"が挙がっています。
最も適切なのはどれか、または、他にもっと適切な訳語があれば教えてください。

Answer
Both "additional information" and "supplementary information" are fine.
"Accessory information" is awkward, unless referring to "information about accessories."
Looking at the window contents, it seems that "document information" might also be acceptable.
If the translation has to be short enough to fit on a button label, you might have to shorten it to just "Info."
【Q7】半導体関連の「1桁から2桁以上高い」というフレーズの英訳は?
半導体関連の英訳をしています。「1桁から2桁以上高い」というフレーズが、「p-Siで作製したTFTの移動度は、a-Siより1桁から2桁以上高いので」というように出てきます。
"higher by one digit or two digits" という表現を見かけましたが、これでよいのでしょうか?

Answer
Assuming that this sentence refers to electron mobility in amorphous silicon and polysilicon displays, the correct translation would be "higher by one to two orders of magnitude."
【Q8】技術英語で「~爪」の単語の使い分けがわかりません。
技術マニュアルの英訳をしていると、部品名でしばしば「~爪」という言葉が出てきます。 専門辞書を見てもclaw, nail, jawなど様々で、使い分けがわかりません。

Answer
「爪」is always problematic.
Which term is used is more a matter of company preference than difference in meaning.
However, as a guide:
- "Nail" and "jaw" are rarely, if ever, used for「爪」
- Personally, unless the actual shape and function of the part are known, I often use "tab." Tabs come in many different shapes and sizes for a variety of purposes; most of the time you will not go wrong with this term.
- Some other terms used are "claw," "catch," and "pawl."
The first two are fairly common, but the third is used only for certain devices, such as those which prevent ratchet gears from turning.
仲谷コメント:私は迷ったら"claw"を使います。
【Q9】「たけのこエルボ」と「めすおすエルボ」の英訳は?
精密機械取説の英訳をしています。配線図の名称で、「たけのこエルボ」、「めすおすエルボ」という言葉があります。
専門辞書の中で、「たけのこばね」...volute springとありましたが、このvoluteをそのまま使ってもいいのでしょうか?
また「メスオス」はmale、femaleと訳していいですか?

Answer
voluteとは「渦巻き式の」という意味です。volute spring は渦巻きの形をしたスプリングのことです。外観が竹の子に似ているのでこういう名前になったのだと思います。
エルボとはL字型(ひじを曲げた形)のパイプで、配管を90度に曲げるときに使用します。渦巻き式のエルボというのは多分無いでしょう。但し外観が竹の子の形に似た(つまり両端の直径が異なる円錐形)エルボは存在するはずですから、竹の子エルボという名前は納得できます。
しかしこれをvolute elbowと訳すのはどうでしょうか。おそらく通じないでしょう。文字通りbamboo-shoot elbowと訳すのが無難だと思われます。
オス・メスは技術の世界でよく使う表現です。male/femaleを使います。電線を接続するコネクタで、ピンの出ているコネクタをオスコネクタ(male connector)、ピンが入る穴のあいたコネクタをメスコネクタ(female connector)と呼びます。
male elbow、female elbowは問題ありません。
【Q10】データを「展開する」の適訳は何ですか?
海外輸出向け機械のマニュアルを英訳していると、データを「展開する」という言葉が頻繁に出てきます。
ひとつの部品データを作ってしまえば、後はそれを他に振り分けることができるということらしいのですが、適訳が思いつきません。支給された英語画面ではdevelopやextendという単語も使われていたので、とりあえず後者の方を使っておりますが、これは正しい表現なのでしょうか?

Answer
「展開」is often used in Japanese where "apply" is used in English.
After creating data for one part, you might apply that data to other applications, documents, or functions. "Apply" is almost certainly preferable to "develop" or "extend" in this case.
【Q11】"waive" のわかりやすい和訳表現を教えてください。
Requirements of national governments shall apply even if not explicitly stated below.
Specific national requirements may be waived under specific purchase orders or engineering part drawings unless a specific exemption has been obtained.
日本語でもなじみのない上記のような文章(要求事項の一部)で、とくに"waive"をどのように訳せばよいでしょうか。
「特定の国家要求事項(national requirements)は、規定の発注書、または設計部品の図面に基づいて放棄される(waive) ことがあります。」が考えられますが、もう少しわかりやすい日本語表現があれば教えてください。

Answer
この種の文章は元が硬い表現なので、わかりやすい文章にするためには適切な日本語を補って訳す必要がありますね。
また、主語と述語が遠いと読む人の負担になってしまいますので主語の位置も工夫しなくてはなりません。
次のようにすれば少しは読みやすくなります。この程度の意訳は許されると思います。
「具体的な発注書または部品の設計図面が存在する場合、該当する国家要求事項は適用されない場合もある。」
【Q12】" " の後のピリオドやカンマの位置を教えてください。
文末に造語があり、その造語を" "で囲んだ場合(例:The load at that time was determined to be the "seizure limit".)、ピリオドはその中に来るのでしょうか?外でしょうか?

Answer
標準的なスタイルでは、ピリオドやカンマは中に入れます。
英文の雑誌や新聞などを参照いただければ、ほぼこのスタイルが使われていると思います。
例えば、
The sign changed from "Walk," to "Don't Walk," to "Walk" again within 30 seconds.
She said, "Hurry up."
ただし、外に出すケースもみられますので、場合によっては客先と打ち合わせされることをお勧めします。
【Q13】動詞の組み合わせによる "operation" の意味の違いを教えてください。
ソフトウエアの仕様書、マニュアル等を英訳しています。
"operation"には様々な意味がありますが(「作業、経営、運用、作動、業務、運転、手術」など)、do/make/take/have/carry outなど、動詞の組み合わせによる意味の違い(使い分け)を教えてください。

Answer
operationはやっかいな用語です。
ご質問のように動詞との組み合わせによって意味が変わる、または決まるようにも思えますが実際はそうではありません。実際の文章の中ではoperationの意味は文脈で決まりますから、前後の文章をしっかり理解して決定する以外には方法はないでしょう。
気をつけたいのが「機械のoperation」というときにoperationの訳として以下2つが考えられる場合です。
1.機械の操作:機械の動かし方(運転者が行うべきアクション)
2.機械の作動(または動作):機械が動くこと、または動く仕組み
これらの2つを訳し分けるには言語的な問題ではなく、機械そのものの知識がなくてはどうにもなりません。この問題は多くの文章を読んで慣れていく以外に解決の方法が無いのが残念です。
【Q14】「電圧」や「信号」の単数/複数形の選択に迷います。
半導体・液晶を英訳していて困るのが、複数単数の選択です。
「~に電圧をかける」「~に信号を送る」と言う場合に、同じものを複数の場所に対して行うときは「電圧」「信号」は数の一致で複数にすべきでしょうか。

Answer
If the「電圧」or「信号」is the same at each location, then use the definite article + single form.
 Apply the voltage to ---
 Send the voltage to ---
Using the plural form in this case indicates that more than one voltage value or signal type is used.
"Voltage" and "signal" belong to that peculiar class of noun which is generally uncountable but which in its plural form expresses different type or variations.
Other examples include the following.
Food (uncountable) ⇔ Foods (types of food)
Resistance (uncountable) ⇔ Resistances (resistance values)
Skill (uncountable) ⇔ Skills (specific different skills)
If the object of your sentence were countable, you would use the plural from.
Install the buttons to each location on ---.
【Q15】"process" と"processing" の使い分けは?
プログラミングに関する仕様書の英訳に頻出する「処理」について、processとprocessingはどのように使い分ければよいのでしょうか?

Answer
情報処理分野に限って言えば「処理」はprocessing(処理すること)に相当します。たとえば、コマンド処理はcommand processing、コンピュータ処理はcomputer processingです。
ただし「コマンド処理する過程においては」のように特別な文脈の中で使う場合、in the stage of command processなどとprocessにする場合もあります。(この場合processingも可)
またタイトルや表中の表現の場合、端的に表現する目的でcommand process、
computer processとする場合もあります。
結局「文中でよりスムーズに読めるほうを選ぶ」というのが解決策です。
【Q16】「必須のshall」は最近使われなくなっているのですか?
モバイル機器の仕様書を英訳しています。契約書などで使用される「必須のshall」は、最近は仕様書ではだんだん使われなくなっていると聞きましたが本当でしょうか?
それとも、契約書のように「必須のshall」を使用した方がいいのでしょうか?

Answer
契約書でも、「普通の」英語が使われる傾向にあるとは言えます。
shallではなく、have toまたはwillが使ってあるけれど、文脈からどう見ても
「規範(・・・するものとする)」を意味しているというようなものも、見かけることはあります。
しかし、どれも大勢には至っておりません。基本的な要素はこれまで通り、英文ではshallを使うのが無難だと思います。仮にshallを使わない文章では、読者の理解しやすさを心得ることが大切です。
文体にshallを使う/使わないだけでなく、「古臭くなく、分かり易い英語を書く」と心得て、あまり長い文を書かないこと、古臭い(大袈裟な)notwithstanding, providingのような語を避ける、というようなことから取り組むのが良いと思います。
【Q17】トラブルシューティングの中の表現で "will" がありました。何故でしょうか?
オートバイ解説書のトラブルシューティングの中に、トラブル内容の項目が
Engine is difficult to start
Engine loses power
Engine overheating
などと現在形の文であるのですが
Engine will not die
Engine will not crank
だけはwillの未来形になっていました。何故でしょうか?

Answer
事実を述べるとき、現在形が基本です。
しかし、「ボタンを押しなさい。そうするとエンジンがスタートします。」のように、「動作」と「結果」が述べられている場合、"Press the button. The engine will start."のようにwillを使うことがよくあります。
【Q18】"No."の複数形の適切な表現を教えてください。
「異品混入を避けるため、生産時の品番切り替えの際は一度装置を停止させること」といったような文で"shift part No."と訳した場合、part No.の前の冠詞はどうすればいいか教えてください。
また、No.のような略語を複数形にする場合、No'sとすると習ったのですが、No'sという書き方はあまりなじみがないとのフィードバックをされることもあります。
これは違和感のある表現なのでしょうか?
そもそも略さずにnumbersとするべきなのでしょうか?
略すときは文の真ん中でもNoの後にピリオドをつけるべきですか?

Answer
No(number)の複数形はNosだと思います。
この種の問題を文法的に解決しようとするのは感心しません。翻訳で大切なのは、原文の内容を正確にわかり易く読者に伝えることです。
この考え方でいくと答えは簡単です。numbersとすると何の問題も無いはずです。
文中で略語を使うときピリオドをつけるのはこれまでの常識でした。しかしピリオドがあると文の終わりだという印象を与え、読みづらくなります。読んだ人がこれは明らかに略語(短縮語)だと判断できる場合、ピリオドをつけない方が親切です。
【Q19】部品は "parts" と訳しますが、部品1個は "a part" でいいのでしょうか?
部品は parts と訳しますが、部品1個は a part でいいのでしょうか?

Answer
基本的にはその通りです。
しかしpartには部品という意味もありますが、ほかにも「部分」というニュアンスがあり、文脈によっては理解しにくいケースもあります。
component、unit、workpieceなどに置き換えると、しっかりと確実に意味が伝わる場合があります。
【Q20】ピリオドのルールは?
「完全な文になっていない」ときはピリオドは不要という原則は、つまり、主語と述語をそなえた文章が完全な文であり、名詞句などは、不完全な文章である、という理解でよいでしょうか。

Answer
ピリオドに関しては明確なルールはありません。
しかし、ご質問の場合はピリオドがあったほうが自然だと思います。
ピリオドの問題は本当にケースバイケースで、いつも困ってしまいます。
「ここで(文が)終わりです。」という意味でピリオドは付けるものですから、文になっていない場合は不要です。
しかし文らしきものの場合、読者にとってどちらがわかりやすいか?といった観点からピリオドをつけたりつけなかったりします。
やはり書く人の考え方で変わってきますね。
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